牡蠣の産地と、味の話(なぜ牡蠣カレーは中々だせないのか)

昨日、牡蠣の産地・味の違いについてご質問・お話くださった常連さんがいたので、今日はちょっと、牡蠣の話。

牡蠣は、天然物の乱獲で絶滅しかけているため、ムムポンドでは無給餌養殖という餌を与えず自然の海で育まれるものを使用しているのですが(環境配慮型の漁業として現在の主流)

牡蠣に限らず、水産物は、漁場・海域・年度によっても、味わいが異なり、なかなか見た目だけでは目利きすることができないので、水産屋さんに話をききにいったり、こういう感じのを見繕ってほしいとお願いしたり、日々奮闘中です。

(一般的な情報など、自分の知識があてにならないなぁと思ったキッカケは、この話で書いています→シーバスを釣って食べた話


たとえば、今回つくりたかった牡蠣のクリームカレーだと「小粒でもいいからしっかりダシが出る濃い味のダシ要員の牡蠣と、最後にトッピングで載せる粒が大きめの牡蠣を、3:1で」という感じでオーダーをしており、

産地は、牡蠣は、広島・三重・韓国の中で、時期によって良さそうな養殖場のものを見繕ってもらっていています。

なぜ韓国?と思われる方もいるかもしれませんが、キッカケは、スタッフが(コロナ前に)韓国のチェジュ島で牡蠣のフルコースを食べた時、日本のものと味が全然ちがって、めちゃくちゃ味が濃く、衝撃的だったことが由縁です。

調べてみると、牡蠣はプランクトンの種類によって味が大きく変わるとのことで、韓国は一部の養殖業者が過去に貝毒・ノロで食中毒を起こしFDAに大きな問題として取り上げられたこともあり、養殖技術が近年目覚ましく進歩している国のひとつでもあります。

日本ではあまり知られていませんが、韓国は、世界で初めて海苔の養殖でASCを取得したり、アジアで初めてアワビ養殖でASCを取得したりと、国家戦略でとして、特許庁と海洋水産部が、先進国を超える水産技術革新を起こすため、水産中小企業に資金を投入して共同開発をすすめ、10年で特許の出願数が500倍に増えている状況です。

(ASC=WWF(世界自然保護基金)とIDH (オランダの持続可能な輸出入を目指す団体)がつくった水産養殖管理協議会)

だからといって、韓国産の海苔やアワビの全てに全幅の信頼をおけるというわけではなく、認証をとっていなくても健全に運営されている養殖場もあれば、逆に、認証をとった後も、継続してずっと同等の運営がされているか?はまた別の問題でもあります。(最終的には現地を見に行かないとわからない)

店主は前職が大手飲食チェーンに食材をおろす食品卸だったので、食材の裏側を見てきたのですが「下手な国産は輸入より怖い」と常々言っています。世界的にも厳しい日本の輸入検査を通した輸入モノと、産地偽装がいとも簡単にできてしまう今の国内管理法…

詳しくは書けませんが、結局、安全や美味しさとは、単純にどこ産か、ではなく、どれだけ信頼できる生産者さん・仲買人さんと出会えるか?や、どれだけ鮮度のよい状態で届けてもらえるか?といった鮮度維持技術・物流ラインにかかっています。

しかし、そこまで気をつけても、みなさんご存知の通り、牡蠣はあたることがあります。それだけでなく、稀に、この世のものとは思えないマズイ牡蠣が入ることがあります。

広島の牡蠣業者さん・福岡の素潜り漁師さんいわく、牡蠣は、どんなプランクトンを好んで食べるかによって味が変わるため、養殖場内ですら個体差があるそうで、国内の適切に管理された養殖場で育っていても、たまに、信じられないほどマズイ牡蠣が生まれるそうです。

このマズさの元凶は、牡蠣が食べる植物性プランクトンに含まれる「ジメチルプロピオテチン」が原因です。(正確には、ジメチルプロピオテチンが、牡蠣の体内で酵素により分解され生成される「ジメチルスルフィド」によるもの)

ジメチルプロピオテチンを多く含むプランクトンを好んで摂取した牡蠣は味が悪く、さらに牡蠣はもともと呼吸で貝の間に泥を吸いながら育つこともあって、

広島の業者さん・福岡の漁師さんも過去に「泥臭い」「薬品くさい」「ドブくさい」「牛糞くさい」といったクレームを受けたことが、何度もあるそうです。

私たちも一度だけ、この牡蠣に巡り合ったことがありますが、本当にまずいです。磯の臭さとは別次元で、ヘドロや牛糞を想像させる味で、食べても人体に問題はないとは知っていても、吐き出してしまいました。牡蠣鍋で、2人で20粒以上食べたのですが、同じロットの牡蠣の中で、一粒だけ、とんでもないまずさの牡蠣がありました。

じゃあプランクトンを食べさせなければいいのでは?というと、プランクトンが豊富でなければ美味しい牡蠣は育たないそうで、

それなら、ジメチルプロピオテチンの含有量が少ないプランクトンを育てて与えればいいのでは?ときいたところ、一つでも、外部から特定のものを多く入れてしまうと、水の生態系を崩してしまうからそうもいかないのだ、ということでした。

このジメチルプロピオテチン特有のまずさは、高温加熱でやわらぐので、街中の定食屋さんで、牡蠣を煮物でなくカキフライで出されることが多いのは、とても合理的です。(街中のカキフライを食べても、吐き出すほどまずい牡蠣にはなかなか出会わないのも、そういう理由なのかもしれません)

以上のような理由から、牡蠣カレーをやるということは、私達にとっては勇気が必要なメニューでもあるため、なかなか安定して提供することができません。

「なんで牡蠣カレーやらないの?」と楽しみにしてくださる方もいるので、少し長くなりましたが、裏側を書いてみました。

また、もし万が一、ムムポンドで提供したカレーで、このジメチルプロピオテチン特有の激マズ味の牡蠣に巡り合ってしまった、という方がいたら、どうか遠慮せず、ご一報くださいませ。

全額返金などの対応をとらせていただくだけでなく、もしこのような牡蠣があった場合は、今後、仕入れ元の養殖場を変更するなどの、対策の参考にもしたいので、「誰でもあたるくらいの牡蠣だから、こんなのあっても仕方ないよね」と泣き寝入りせず、お声をお寄せいただければ幸いです。

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